ClO2の特徴
ClO2(二酸化塩素)は常温常圧下では気体の化学物質で、強い酸化力をもつことからウイルスの除菌だけでなく、消臭、抗カビ等にも高い効果が認められています。その殺菌力は菌の中でも最も殺菌することか難しいとされている「芽胞菌」をも殺菌する程です。また水に溶けやすい性質があり、使用場面に応じて様々な使い方ができるのが特徴です。
ClO2の特徴
- 常温常圧下では気体
- 水に溶けやすく使いやすい
- 除菌・消臭・抗カビに有効
- プールのような塩素の匂い
ClO2の安全性と使用例
安全性
ClO2は、世界各国で食品添加用として広く使用が認められており、日本国内でも水道水の消毒や小麦粉の漂白に使用されるなど、特に経口摂取においては安全性の高い物質と言われています。
一方で、ガスの暴露に関しては測定の難しさもあり、定量的で整合性の取れた資料は少ないですが、ヒトおよび動物への暴露に関してのデータは整っており、国際的な機関では一定の濃度基準が定められています。以下の表は代表的な濃度基準値です。
ClO2先進国であるアメリカ合衆国が設定している*1基準値や日本二酸化塩素工業会が設定している*2指針値以内であれば、変異原性や発癌性は示さないことも確認されています。従って、正しく使用することでClO2の優れた除菌・消臭力を有効に活用することができます。
*1 米国産業衛生専門会議 基準値:8時間平均の暴露許容濃度 0.1ppm
*2 二酸化塩素工業会 室内濃度指針値:一生涯吸い続けても安全なClO2濃度 0.01ppm
機 関 | 暴 露 基 準 | 濃 度 |
---|---|---|
ACGIH (米国産業衛生専門家会議) | 1日8時間、週40時間での許容値(TWA) | 0.1ppm |
OSHA (米国労働安全衛生局) | 8時間平均許容暴露での許容限界(PEL) | 0.1ppm |
NIOSH (米国立労働安全衛生研究所) | 1日10時間での許容値(TWA) | 0.1ppm |
AIHA (米国産業衛生協会) | すべての人が60分間の暴露で恒久的に健康への影響が生じず、保護具着用などの行動能力の低下が生じない空気中の最大濃度 | 0.5ppm |
USEPA (米国環境保護局) | 乳幼児・高齢者・喘息などに罹患した感受性の高い人を含めた一般人に対して健康影響を生じないが、一時的な不快感や刺激などを感じる空気中の濃度 | 0.15ppm |
日本二酸化塩素工業会 | 一生涯吸い続けても安全なClO2濃度 | 0.01ppm |
身近なClO2
ClO2は気体・液体共に使用できるその利便性と、ダイオキシンやトリハロメタン、オゾンガス等の有害物質を生成しない点、また強力な殺菌力をもつことから医療機関や温泉施設など衛生管理が厳しい業界はもちろん、私たちの身近なところでも活躍しています。
ClO2が使用されている業界
身近な使用例
- プールの消毒
- 浄水処理場での消毒(水道水の消毒)
- キッチン用漂白剤
- 小麦粉・パン粉の漂白
- 紙パルプの漂白
2001年にアメリカで発生した、炭疽菌が送りつけられたバイオテロの際にも建物の除染にClO2が使用され、その能力は国内外で高く評価されています。
エボラウイルスが流行したアフリカでは医療器具からの感染を防ぐために、現地で手早くできる滅菌方法としてClO2での医療器具の消毒が行われ、その結果は2015年に論文として報告されています。
他の殺菌剤との違い
代表的な殺菌剤
ClO2
メリット|強力な殺菌力 / 優れた消臭力 / 発がん性物質を生成しない / 低濃度でも有効 / 水溶性が高く用途の幅が広い
デメリット|紫外線に弱い / コストが高い / 高濃度の場合、金属を腐食する
アルコール
メリット|速乾性に優れている / 幅広い菌・一部のウイルスに有効
デメリット|引火性がある / コストが高い / ノロウイルスなどには効果が低い
次亜塩素酸
ナトリウム
メリット|コストが低い / 幅広い菌・ウイルスに有効
デメリット|pHによって効果の増減が大きい / 消臭効果は低い / 金属腐食が激しい
オゾン
メリット|強力な殺菌力
デメリット|生臭いニオイ有 / 低濃度でも人体に有害 / 水溶性が低く用途が限定的 / コストが高い / 金属腐食が激しい
用途の比較
ClO2は、消毒用アルコールや次亜塩素酸ナトリウム溶液のように液体として噴霧や清拭する使い方も、燻蒸剤や消臭剤のように気体として徐放させる使い方も可能です。このような幅広い使い方ができる点は、ClO2の優れた特徴です。
使い方 | 詳 細 | ClO2 | アルコール | 次亜塩素酸 | オゾン |
---|---|---|---|---|---|
徐放 | 成分を緩やかに拡散する | ○ | × | × | ○ |
燻蒸 | 高濃度の成分を短時間発生させる | ○ | × | × | × |
噴霧 | 成分を溶かした液を噴霧する | ○ | △ | × | × |
清拭 | 成分で器物を拭く | ○ | ○ | △ | × |
浸漬 | 成分を溶かした液体に器物を沈める | ○ | × | ○ | × |
ClO2の効果|試験データ
ウイルス不活化効果
浮遊しているウイルスに対してだけでなく、マスクに付着したウイルスにも効果を発揮することが確認されています。
除菌効果
細菌の中で最も殺菌が難しいと言われている「芽胞菌」をはじめ、あらゆる細菌に有効です。ClO2水溶液での試験を含めると、20種以上の細菌に効果があることが確認されています。
【効果が確認されている細菌】
芽胞菌/大腸菌(O-157)/サルモネラ菌/レジオネラ菌/腸炎ビブリオ菌/黄色ブドウ球菌 etc.
消臭効果
生ゴミ臭や加齢臭、溶剤のニオイなど様々な悪臭物質に有効です。
【効果が確認されているニオイ物質】
アンモニア/硫化水素/メチルカプタン/トリメチルアミン/エチルベンゼン/ノネナール etc.
防カビ効果
食品や壁などに発生し、一般的に「青カビ」や「黒カビ」と呼ばれるカビへの効果が確認されています。